弊社では、Webの技術を用いた棚卸システムを内製しています。社内にLinuxサーバを置き、Vue.jsにてWebアプリを開発いたしました。月度の棚卸を現場に置かれたPCやタブレットのブラウザから入力できる仕組みが完成し、運用しています。
現在は、棚卸の機能に加え「日々の生産管理」「部材手配」「休暇等の各種申請」「機器の台帳」など、機能を拡張しながら社内のあらゆるデータの一元管理を目的とした開発を続けています。
このWebシステムに、「チェックシートや検査記録といった製造段階における実績データも入力できないか」というところから、ラズパイを用いた計測器のデータ取得のシステム構築へとつながっています。
計測器データをラズパイで取得することのメリット
計測器のデータは、ラズパイ等を使わずにWindowsやLinuxなどのデバイスであれば問題なく直接取得できるケースが多いでしょう。
弊社があえてデバイスとWebアプリの間にラズパイを置いた理由は、下記のメリットを考えたからです。
・現場デバイスのOSもスペックも問わず、現状システムからの移行がスムーズになる
・脱Excelが図れる
弊社の製造現場にはWindows7などの10年以上前のPCが多くあり、そういった環境を維持しながら(デバイス刷新のコストを抑えながら)システムをWebに移行するには、ラズパイのようなシングルボードコンピュータの利用は最適でした。
生産管理用途で組んであるWebアプリは、クライアント(ブラウザ)側の処理が重く、PCのスペックにより処理時間が変わります。ここに計測器との通信機能を追加すれば、PCへの負荷を増長することとなり、10年前のPCでは処理速度に問題が出ることがありました。
ラズパイの利用で、計測器との通信を現場のPCから分離することができ、現場PCはWebアプリをブラウザで動かすだけのデバイスとして処理を集中できます。
”現場PCのスペックが低い”という弊社ならではの特殊な状況ではありますが、PCの負荷分散を考えると、ラズパイの利用で現場PC刷新のコストが抑えられたことは大きな成果でした。また、Excelソフトを廃止できる点もコスト面では特筆すべき点です。
以下では、システムの概要を記します。
ラズパイーWebアプリ連携の概要
弊社で扱うようなネットワーク機能の無い計測器をWebアプリからコントロールする術は、なかなか見つかりません。ブラウザのセキュリティの仕様に引っかかり、Webアプリからの指令でローカルのPCに接続された計測器からのデータ取得が難しいためです。
そこで弊社では、上図の通りWebアプリ・ラズパイ双方からサーバを経由し、データの取得を実現しました。詳細は省きますが、Webアプリでデータ取得のファンクションを発火してから、データ取得までのタイムラグは最大で2秒程度です。
このような仕組みで、生産管理用に設計したWebアプリを現場のハードウェアに接続するという大きな課題をクリアすることができました。
今回、ラズパイ=計測器間のデータ取得で用いたライブラリはpython言語の「pyvisa」で、計測器のインターフェースが[USB、RS-232C、GPIB、LAN]など幅広い形式に対応できる優れたライブラリでした。
ラズパイの耐久性、通信負荷の対策(IoT向きの通信プロトコルの検討)など、システムのブラッシュアップを継続しながら、より使いやすくメンテナンス性・拡張性に優れたシステムを目指します。